ウルトラマンマックス30話「勇気を胸に」

2週程録り溜めしてあったマックスを視聴。丁度小中千昭さん脚本の2回でした。29話「怪獣はなぜ現れるのか」もウルトラQオマージュ&ノスタルジー編として面白かったのですが、続く30話で、この番組の放送開始直後にあった「負の要素」を見事に消化(昇華?)出来たなぁ、と感心しつつ涙ホロリと来ました。小中さんこういう話上手いよなぁ。

ネクサスの不振から急ぎこしらえた感のあった番組当初。災害ボランティアの割には避難勧告も聞かずに無茶な救助をしている熱血DQNの主人公がどうにも鼻についていました。防衛チームダッシュもなんだか役立たずっぽいし、宇宙から眺めていたマックスが主人公に唐突に力を貸す、という見ようによっては結構陳腐な始まりだったのです。特撮レベルもCG駆使のネクサスから着ぐるみ怪獣に立ち戻り、正直「う〜ん…でも難解で暗いネクサスよりはマシだな、見てて嫌な気分にならないしー」程度の、原点回帰というより子供だましに近い印象でした。
それが1クールを越えたあたりから意外にもグングン面白くなり……空想特撮シリーズならではの、毎回バラエティかつ緩急に富んだ面白さを発揮しちゃうワケです。今や平成ウルトラ最高傑作と言っちゃってもあんまり怒られないんじゃないんだろーか、ってくらいに優良な番組になってると思うのデスよ、あくまで個人的にですが。面白くない回もあるけど、次週はノリが違うからまた見ようと思える作品、それがマックス。一話のテキトーな導入が無ければなあ、と残念に感じる程、現在充実している作品だと言えるでしょう。

そして今回。その第一話からの、作品内における「う〜ん…」と感じていた部分に結構メスが入り……その患部が摘出されたと感じました。最終章へ向けての精算回、と言っても良いでしょう。一話の怪獣の強化型が登場した点からも明らかですし。

冒頭、主人公は悪夢を見ます。「マックスが助けてくれなかった自分の姿」を。病室の重苦しい空気の中「勇気と無謀は違う。この青年にそれを教えてやりたかった」と隊長に呟かれ息を引き取る青年。それが本来の自分の姿である事を悟り、マックスという、これまで無条件で信頼していた(子供番組のお約束ですし)存在に対し不安を持ち始めます。「なぜマックスは俺を助けてくれたのか」。一話の主人公の行動はやはり(主人公補正の入った)無謀であって、本来やっていけない事なのだ、と視聴者に対してフォローが入ったのだ、と私は感じました。
そして、プロ集団の割にはどこかお気楽に見えるダッシュの在り方には、これまでの兵器が効かない怪獣をもって喝が入ります。その結果、兵器開発担当のショーンを中心に据えた話になるのですが、彼は「今日初めて怪獣に恐怖を感じた。奴は人間に対し悪意をもち、嗤っている」「今まで自分の作った武器で倒せる嬉しさに酔っていただけかも」「僕の兵器が間に合わなくてもマックスは来てくれる」と、己の無力さ(番組内での緩いダッシュ体勢そのもの?)を吐露するのです。これにより「調子にのっていた事への自戒」「マックスの存在が彼らの存在意義に陰をおとしていた事」を視聴者に提示します。これらを彼ら自身が語ってくれる事で、見ているこちらは素直に同情する事が可能になったのです。

そして、これら番組開始当初に抱えていたマイナス面への懺悔が終わったあと。カイトは実に主人公らしい見事な実直さでこれらに応えていくのです。
有効な武器を作れず落ち込むショーンに対し、カイトは自分の過去を語ります。自分は両親を地震災害で失った。その後悔が自分を無茶に走らせるのだと。自分は両親すら救えない、何もできない人間だけど、それでもこれから救える人はいる。だけどショーンには優秀な頭脳がある。これまでも多くの人を救ってきた実績がある。きっと出来るはずだ、と同僚を勇気づけるのです。ウルトラマンという超人的な力を得ても慢心せず、自らの無力さを噛みしめながらも出来ることに前進する主人公、それがカイトなのです。
うわー、こういうの弱い!ティガの「人間ウルトラマン」にも感銘を受けましたが、カイトも負けず劣らずのいい青年だった!うう、涙腺が〜(笑)

そして決戦前。カイトはウルトラマンに、なぜ自分を助けてくれたのかと問いかけます。そこでマックスは「地球が宇宙と調和できるかを観察している存在で、本来直接関与はしない」「自分はいつまでも地球に留まれない」という、自らの事情を初めて語ります。突き放す様な解答に焦るカイト。ですが……マックスはこうも言うのです。「しかしカイト。君の、みんなを守りたいという気持ちが私を動かしたのだ。私は君に今託している。自分の判断を信じたまえ」と。
一話から理由も分からず「ただ在った」ヒーローの動機。それは主人公への感銘という、身近であるが得難いものであったのです。番組内が内包していた負債を全て昇華してくれる珠玉の名シーンだと感動しました(ターム自体は確かに1話からあったのですが……これまでの蓄積の重みが違うというか……)。

そしてショーンの機転により怪獣は撃退され、ダッシュ・そして主人公達は自信を得て前進できる様になるというハッピーエンド。ここでカイトはマックスへ想いを送ります。
「マックス。今は君の力が必要だ。俺は君の期待に精一杯応えていく。そしていつか遠い未来……俺達地球人も、君たちの様に宇宙に飛び立つだろう」と。

あー、いい最終回だった!(笑) いやいや、これからまだまだ盛り上がりそうで楽しみなのですが。マックス・リュウケンドー・そしてセイザーX。アニメが不振な気がする昨今、ここまで面白い特撮が充実してる世代は無かったのでは無いでしょうか?
あー俺特撮好きで良かった、と思える幸せを噛みしめながらセイザーXの3回目の視聴に入ります。セイザーは語ること多すぎてまだ書けません!(笑)