ウルトラマンメビウス第29話「別れの日」

当初から防衛組織とウルトラマンが共に成長していく話として作られたメビウス。前年度の「ウルトラマンマックス」は、人気を博したにもかかわらず商業的な大ヒットには至りませんでした。安価なソフビ人形よりも超合金などの高額商品をより多く売りたかったメーカーにしてみれば、ウルトラマンや怪獣に人気が出たのはいいが、売るアイテム展開に困ってしまったのです。これはウルトラシリーズ全般に言えた、ある種根っこの問題だったと言えるでしょう。
そこで、今年はスポンサー主導のもと(?)超合金や関連グッズを多数出す事の出来るよう、防衛チームをメインに据える方針でスタートしました。ウルトラシリーズ40周年記念作品ですから協賛企業も多く、無様な真似は出来ません。こうしてウルトラマンよりも強い攻撃力を持った防衛チーム・CREWGUYSが誕生したのです。 彼らはかつて地球に飛来した侵略異星人達の技術を流用したオーバーテクノロジーメテオール」を使い、直接ウルトラマンと共闘できるまでの存在になりました。 さらに、単発エピソードだとリピート視聴に繋がりにくいとの配慮から、ストーリーに連続性・大河ドラマ的成長要素を入れる事で、隊員達とウルトラマン、それぞれが相互に成長・活躍する物語、という基本構成が誕生したのです。
この大英断に対し、番組当初は「東映のヒーロー戦隊かコレ?」「隊員は見飽きたから単独ゲストのエピソードやれよ!」的批判もチラホラありました。歴史ある過去のウルトラ怪獣をアッサリ倒す防衛チームや新しい怪獣に「過去の怪獣を当て馬的に使うな!」と怒る旧来のファンも多くいました。あの時批判をしていた保守派のウルトラファン達に、今日のこのエピソードを見て欲しいな、と思いました。もう3度程見直しましたが毎度涙腺が緩み感涙しながら見てます。

くう〜っ、今年のコンセプトは見事に大成功だよ。28話分の積み重ねが見事に活きた秀逸な回でした。長すぎる前置きでしたが、ザッと解説というか琴線に触れた部分などを。


#以下番組のネタバレに付き、未見の人は注意!(笑)

ウルトラの父から帰還命令を出されたメビウス。ルーキーのメビウスでは敵わない程の脅威が地球に迫っているらしく、既に地球へは先輩が向かっている。哀しみつつも、帰還を前にGUYSの隊員達へ最後の心づくしをするミライ。そんな時、正体不明の巨大ロボットが急襲。戦ってはいけないと言われていても、やはり黙ってはおれず飛び出そうとするミライ。それをリュウは、敵に背を向ける行為と勘違いして声を荒げます。

「ミライ!目の前に敵がいるのに逃げ出すのか!俺たちが、GUYSが背を向けたら誰がアイツを倒せるんだ。誰が地球を救えるんだ!」裏表無くがなるリュウの言葉は、異星人ならではの純真さを持つミライに、常に深く響きます。ミライから瞬間、迷いを無くすほどに。「僕が……僕が救います!リュウさん。今までありがとうございました!」
変身しようとするミライ。ですがウルトラの父の「今の君が臨めば、命を落とすのは確実だ」との警告が脳裏をよぎり、躊躇ってしまいます。それでも、逃げまどう人々や命がけで戦うGUYSの仲間達の姿を見てミライは決意を新たにするのです。ここで画面では、逃げる群衆の手を離れ飛んでいく一つの「赤い風船」が映ります。この風船は「平和な日常」を表現する小道具、というだけの意味では無いでしょう。そう、これはまさに1話の冒頭、地球に降り立ったミライがはじめて地球人にした行為への比喩。風船を手放し泣いていた子供を救った事こそ、ミライがはじめて地球でした善行であり交流だったのです。見過ごしてはいけない。いや、ミライは見過ごさないんだ!という秀逸な描写です。そしてなにより、ミライはリュウに、こうまで言うのです。

「見ていて下さい!僕の最後の戦いを!」

死ぬ覚悟をリュウに伝えての変身!もうこれは泣かずにはおれないでしょう!そしてウルトラマンメビウスが登場。リュウは当然その正体に気づきます。まだ29話なのに! メビウスの攻撃は父の言葉通り通用しません。必殺技で傷つけは出来ても、すぐに再生・強化する敵。そして瀕死のメビウスはビルもろとも大地に倒れるのです。叫ぶリュウ。 そこにやって来たのは……クゼ隊員じゃ無くても叫びます「ウルトラマンタロウ!」と!! そう、メビウスの教官であるタロウです!石丸博也の「ストリウム光線!」が聴けるとは!ここでタロウが活躍し、敵ロボは撤退します。その華やかな活躍と対比するかの様に、画面は必死にミライを探すリュウの姿へと切り替わります。そこでリュウは、ミライの名を呼び叫び、これまでのフラッシュバックと共に心情を次々と吐き出していくのです。
メビウスなら……メビウスだって最初から言いやがれ!」「なんでお前は……誰にもなんもいわねえで1人で戦ってやがった」「弱ぇクセに無理ばっかしやがって、どんだけ死にそうになりやがった」「俺にどんだけさんざんな事言われやがった!」
普段から怒鳴ってばかりの、一種ウザいレベルでの熱血・直情キャラであるリュウの真骨頂と言える部分です。憎まれ口を叩く事でしか相手を気遣えない、不器用な奴。そしてリュウの胸中には、ミライの変身前の言葉「今までありがとうございました!」の回想が被ります。
ここでリュウのトーンが複雑に沈んでいくのです。自分はウルトラマンを邪魔に扱い、味方として認識してからも「俺達がいないとダメなウルトラマン」と軽口を叩いていた。「人の気持ちの分からない、所詮は宇宙人」と言ったことだってある。なのに、その正体であるミライはそんな俺達に素直に接し、あまつさえ感謝までしてくれた……。
「そのセリフは……俺のじゃねえか。お前を助けてやってる気が……いつも助けて貰ってたのは俺の方じゃねえか!ミライーッ!」
瓦礫の中で叫ぶリュウ。ここの叫び芝居はホントすごい。松方弘樹ジュニア喉潰しちゃうんじゃないかなぁ、とか心配しつつも、その迫真の演技にボロボロ泣きました俺。そして倒れたミライを発見し、無事を確認するリュウ。その頭上から巨大な瓦礫が降り注ぎ……次週へ!うおおお気になるっつーの!こりゃ来週も凄そうだァーッ!?予告見た限りウルトラマンタロウリュウ達直訴しちゃうっぽいし!

あー、やっぱメビウスはスゴイ……。日本はゲームやアニメ売るより特撮世界に向けて売った方がゼッタイにいいと思うんだけどどーですかね。パワーレンジャーみたいに改変しないと分からないかなぁ。つーか俺の感動も40年のシリーズの積み重ねの部分も大きいしなぁ……うーむ(笑)